国宝に見る小浜藩主・酒井忠義

2019年8月発行

国宝「島津家文書 岩倉具視伝記絵巻」安政年間酒井忠義へ賜膳図
(図録『特別展 幕末維新の激動と福井』より)

 五百円紙幣の肖像となった公卿岩倉具視は

明治維新の元勲の一人です。

この具視を、

明治に入っても旧小浜藩士たちは何かと頼っていますが、

最初に深い絆で結ばれたのは十三代小浜藩主の酒井忠義でした。

 二度目の京都所司代を務める忠義は、

安政の大獄後の京都で、

具視とともに和宮降嫁による公武合体政策を積極的に推進します。

その関係を深める契機の一つが、

この(国宝「島津家文書 岩倉具視伝記絵巻」)に描かれた

「所司代酒井忠義に御膳を賜う図」です。

名誉と思い御所へ出かけた忠義が食した御膳は、

腐敗しかけの魚や水っぽいお酒でした。

具視の意図を察した忠義は、

朝廷の家政(財政)の抜本的改革を行い、

二人の信頼関係が高まったとされています。

中島嘉文