世代交代と伝統文化

2018年1月発行

おおい町大島宮留地区の勧請縄と勧請板 (撮影者 須川建美)

  ウチの寺があるおおい町大島地区は、

他所よりも割と早くに家の世代交代をする風習があり、

家の事情にもよりますが、息子や婿がいる場合、

戸主(家長)が七十歳くらいには交代します。

 世代交代の早さは、伝統文化の継承と関りがあるように思います。

 ところで小浜市には正月に有名な「勧請縄」という行事が行われますが、

大島地区も「はなんとう」と呼ばれる同じ行事があります。

 その縄に吊るす「勧請板(かんじょういた)」の願主名には、

藤原や物部といった奈良・飛鳥時代の権力者の姓が並ぶのですが、

そうした、当時この大島へ左遷された貴族など位の高い人々によって、

重文指定の仏像や豊かな文化が伝えられたとも言われています。

 また中央の権力者は家督を譲るのが早い人も多かったらしく、

その名残からか今も家督相続が早いため、

集落の行事執行者は毎年新たな若手が入れ替わり、

若い後継者が自覚と責任感をもって円滑に引継ぐさまは、

見ていてとても頼もしく感じるものがあります。

 昨今廃れがちな諸行事や伝統文化が、

大島では根強く受け継がれてきました。

 少子高齢化の時代、参考にしていただければと思います。

海岸寺住職  石崎 靖宗

おおい町大島浦底地区の勧請縄と勧請板 (撮影者 須川建美)