クズの葉は昼寝する!?

2018年9月発行

『万葉集(1537)』の巻8に、山上憶良は

     「秋の野に 咲きたる花を 指折りて かき数ふれば
                         七種の花 萩の花 尾花 葛花 撫子が花女郎花また藤袴 朝顔の花」

と秋の七草を詠んだ。

 その中の「葛花」がクズで、全国いたるところで見られるつる性の多年草です。

8~9月頃、ほのかな香りのある赤紫色の花を密につけます。

根の外皮を取り除いて乾燥したものが「葛根(カッコン)」で、

漢方では発汗、解熱、鎮痙(チンケイ)を目的に葛根湯などに配合され、

成分として含まれるイソフラボンは、体内のカルシウムを制御する物質です。

 
 クズの肥大根にはデンプンが10~15%含まれ、

これから得られる「葛澱粉」は和菓子の材料として欠かせません。

奈良県大宇陀町の“吉野葛”は有名ですが、

若狭熊川宿でも極めて良質の葛が生産され、

現在も昔のままの製法が細々と守られています。

 本種の葉は睡眠(就眠)運動をします。

光の強い晴天の昼間は、葉表を中にして光を平行に受け、

受光量を少なくしています。この時白い葉裏が微風に揺れて、

涼しげな風情が美しいので「裏見草」の別名があり、

この状態を「クズの昼寝」と呼んでいます。

荒れ地にはびこる“厄介者”のクズでも、

このような観点で見直すと、また違って見えるかもしれませんよ。 

小浜病院薬草園管理アドバイザー 渡辺 斉